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降っても晴れても

好きな本や映画についてごにょごにょ書きます

セクシーなヴィクトリアン:ゲイル・キャリガー『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』

1年ぶりのブログを更新です。

ここ1年ぐらい、長編シリーズ一気読みにハマっています。

年末年始にはスティーグ・ラーロンの『ミレニアム』シリーズを必死に読んでいたのですが、最近何を読んでいたのかというと、ゲイル・キャリガーの《英国パラソル奇譚》シリーズです。

 

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

 

アレクシア女史が活躍する5作品を《英国パラソル奇譚》と呼ぶのですが、これが本当に面白い! 

 

舞台は、《異界族》と呼ばれる吸血鬼や人狼と人類が共存する1870年代のイギリス。

ヒロインは、オールドミスで、イタリア人の父の血を引くアレクシア・タラボッティ

大柄で浅黒く、鼻も大きなアレクシアは、当時の美人の条件には当てはまらない女性なのですが、さらに彼女は、吸血鬼と人狼の能力を唯一無効化できる《反異界族》という種族の生まれということになっています。

不死である《異界族》も《反異界族》であるアクレシアに触れられると「死すべき運命」の人間に戻ってしまうため、彼女は《異界族》にとって最大の恐怖であり、そのため5作品に渡って、命を狙われ続けます。

 

話としては、そんなところなのですが、この小説の何が面白いかと言えば、ヴィクトリア朝なのに、まったくヴィクトリア朝らしくないところです。

そもそもこの小説は、「スチームパンク小説」として紹介されていますが、設定やテクノロジーの他にも、すぐ全裸になる人狼や男色家で洒落者の吸血鬼やら、男装の発明家などヴィクトリア朝にはあり得ないようなキャラクター造形とストーリー展開が読みどころになっています。

 

もう何でもありな感じもするのですが、古典イギリス小説もちゃんと意識しているところもお気に入りです。

 

アレクシアの恋人として登場するのが、人狼団のアルファ(ボスの意味)であるマコン卿。この2人の関係は、まさにジェイン・オースティンの『高慢と偏見』、エリザベス・ベネットとミスター・ダーシーそのもの。

この『高慢と偏見』らしさは、どちらかというと、オースティンの原作というよりもBBC製作のドラマの方に近いのかもしれません。

マコン卿は、「山のような男」と描写される大柄の男性なのですが、まぁ、脱ぐ。(作中の1/3は全裸です。)

アレクシアも「レディ」であるにも関わらず、彼の逞しく美しい裸体を愉しんでいるのですが、そのマコン卿のセクシーさは、池に飛び込むミスター・ダーシー(コリン・ファース)を彷彿とさせるものがあります。

 


The Lake Scene (Colin Firth Strips Off) - Pride and ...

 

まぁ、こんなラブコメの元祖のような作品を意識しているのに、おもしろくないわけがなく、見事にどハマりしてしまいました。

 

ちなみに、アレクシアの物語は5作で終わりなのですが、続編として《英国空中学園譚》があります。こちらは時代を遡った設定になっており、スパイ養成学校に入学してしまったソフロニア嬢が主人公になっています。(YA小説として発売されたようなので、セクシー度は下がるみたい)

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

こちらはこれから読み始めるのですが、さらにキャリガーはこのシリーズのあとにアレクシアの娘プルーデンスを主人公にしたシリーズを書き始めたそう。

本国では今年の3月に発売されたようなので、翻訳を心待ちにしております!

 

食事を愛し、男の肉体と官能を楽しみ、パラソルを振り回すという当時の女性の理想像である《家庭の天使》像の逆を行くアレクシアの冒険、紅茶片手に楽しんでみてはいかがでしょうか。