降っても晴れても

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スプラッター・ロンドン:ヴィオラ・カー『二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(ヤヌス)』

久々の更新です。
 
アレクシア女史&ソフロニア嬢&プルーデンス嬢にハマったら次はこれでしょう!!!というような小説がハーパーBOOKSから出ました。
 
ヴィオラ・カーの『二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(ヤヌス)』(The Diabolical Miss Hyde)です。
 

二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(双面神:ヤヌス) (ハーパーBOOKS)

 
アレクシア女史と同じくヴィクトリア朝が舞台のスチームパンク小説です。
(翻訳者もアレクシア女史シリーズと同じ川野靖子さん。)
 
主人公は、医学博士で警察医として働くエリザ・ジキル。
彼女は、あのヘンリー・ジキルの娘という設定になっています。
 

ジーキル博士とハイド氏 (光文社古典新訳文庫)

 

題名からしてだいたい想像がつくかと思うのですが、エリザは父のジキル博士と同じくもう1つの人格を持っています。

それが、奔放でロンドンの裏社会にも出入りできる血の気の多いリジー・ハイド。

(エリザは父のジキル博士と同じで、リジーに「変身」することができる。)

 

殺人現場を見て鼻息を荒くするリジーの人格に苦しみ、また彼女を相棒にしながら仕事をこなすエリザですが、ある日から女性の脚や腕を切断するといった猟奇的な連続殺人が起こります。

その事件の真相を探っているうちに、命と身の危機感を感じるエリザ。

連続殺人の犯人、エリザを狙う人物とその目的はいかに…?というのが大筋の展開です。

 

ヴィクトリア朝を舞台にしたスチームパンク小説なのですが、基本的に血みどろ、スプラッターです。

アレクシア女史と比べるとコミカルさもロマンス度も控えめで、とにかくロンドンという都市やヴィクトリア朝の暗黒面が目立つ作品になっています。

 

余談ですが、ロンドンアイの近くにリニューアルした「ロンドン・ダンジョン」は、この小説の雰囲気によくあっています… 

 

さて、個人的には、エリザとリジーの関係性が面白かったです。

翻訳は「二重人格探偵」銘打っていますが、エリザが探偵であるならば、もう1つの人格であるリジーがワトソン役と言ったところでしょうか。

一応エリザには、ヒポクラテス(通称ヒポ)という機械仕掛けの相棒がいるのですが、相棒としては結構ポンコツ。

聡明な淑女であるエリザと酒と喧騒を愛するリジーは正反対の性格ですが、エリザは絶えず自らの内にあるリジーに話しかけ、対話を求めます。その一方で、好き勝手しゃべるリジーを煩わしく思うのですが。

リジーもエリザが死ぬと自分も存在できなくなってしまうため、エリザのことを守ろうとするのですが、そこには愛情さえ窺え、2つの人格はお互い愛し合い慈しみ合っているのだなという感じです。

 

お互い思い合う2つの人格ですが、ラファイエット大尉という美男子に関しては対立します。

 

見るからにプレイボーイで抜け目ないラファイエットにエリザは警戒をしますが、リジーは彼が大のお気に入り。

最終的にエリザの秘密を知った彼は、彼女とリジーとの両方を受け入れるという旨の発言をしていますが、この1人の女性に宿る2つの人格を受け入れるってそれどうゆうわくわく三角関係なのでしょうか……続編、めっちゃたのしみです。

 

600ページ近くある長い小説ですが、作品の雰囲気にハマると、一気に読み進められます。

 

基本的に猟奇的な事件や血なまぐさいセンセーショナルな描写が目立つ作品なのですが、その中でも際立っているのが、エリザの父ジキル博士の友人が働く「ベスレム精神病院」。

ここは実際にあった精神病院なのですが、その描写が妙に生々しいです。

ちなみにこのベスレム精神病院ですが、ジャネット・ウィンターソンの『タングルレック』という小説にも登場します。

 

タングルレック

 

ウィンターソンが子供向けに書いた小説なのですが、表紙の耳の大きな少年が、ベスレム精神病院から逃げ出して、ロンドンの地下に住み着いた人間たちの子孫という設定になっています。(この設定自体は、H. G.  ウェルズの『タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)』に近いものがあるのですが…)

 

 
なお、エリザは電子書籍で購入してしまったのですが、書店で文庫を立ち読みしてみて非常に後悔しております。
 
鈴木康士さんによる美麗挿絵が電子書籍版には表紙以外は収録されていないんですよね〜
(1ページ目のラファイエットのイラストが最高!)
わたしは最近収納スペースの問題でもっぱら電子書籍で購入しているのですが、続編の出版を待って文庫で買い直したいと思います。
 
 
作者のヴィオラ・カーはなんでも歴史が大好物だそうで、もともと考古学者であるゲイル・キャリガーもそうですが、ちゃんとした歴史的な基礎があるエンターテイメント作品はやっぱり面白いですね。
 
 
その関連で行くと、現在デボラ・ハークネスの『魔女の目覚め』を取り寄せ中です。

魔女の目覚め 上 (ヴィレッジブックス)

 
なんでも著者のデボラ・ハークネスは、現役ゴリゴリの歴史学者だそうで。
ヴァンパイアものみたいなので、楽しみにしてます。
 
おもしろかったら、今度こちらでも記事を書きたいと思います〜